悩める介護士
悩める介護士
僕は10年間介護施設のリーダーとして様々な人間関係の問題を体験してきました。
ですので人間関係が悪くなってしまって頭を抱えている人の気持ちは良く分かります。
ですがこのまま放っておくと最悪、介護職員の退職ラッシュが起こり自分の負担が増え、残業・休日出勤・などで体力やメンタルを消耗して病気にもなりかねません。
これは想像の話ではなく実際のデータで判明している現実です。
もし現実にあなたが勤めている介護施設で退職ラッシュが起これば大変です。
今のうちに何かしらの対策を行っていかなくてはいけないのです。
- あなたの介護施設の人間関係が悪くなってしまう13の複雑な理由
- 人間関係が最悪な介護施設の雰囲気を良くしていく7つの方法
この記事を読んで実践すれば笑顔あふれるストレスフリーな職場を手に入れて、楽しく働けるような環境を実現できるようになります。
ぜひ参考にしていってください。
もくじ
悩める介護士
こんな風に思っていませんか?
実際に介護労働安定センターの調査を見てみると介護職離職の原因の第1位は人間関係の悩み(23.2%)で運営方針への不満(17.4%)という結果が出ています。
このデータから職員個人間での人間関係トラブルが多いことや、介護施設への不満からストレスが溜まりやすい環境であることが想像できます。
また、厚生労働省が発表した別のデータでも・・。
- 自分と合わない上司や同僚がいると答えた介護士【27.3%】
- 上司や同僚との意思疎通がうまくいかないと答えた介護士【20.6%】
- 介護職の離職理由第一位は人間関係【20,0%】
という結果が出ています。
つまり、およそ47,9%の介護士が何かしらの人間関係で悩んでいて
20,0%の介護士が人間関係の悪化で辞めていくという事です。
なぜここまで人間関係の悩みが絶えないのか?
原因は以下の通りです。
- 人手不足で疲労がたまりやすい環境
- 慢性的な人手不足により一部の介護士に負担がかかりトラブルの原因になる
- 教育が行き届かない環境
- いじめやパワハラがある。またそれを見過ごす職場の風土がある
- 女性の比率が高いゆえの悩み
- 幅広い年齢層の職員がいる
- 様々な職種、価値観、介護観が入り混じっている
- 性格に難ありな職員がいる
- 責任が重いのでプレッシャーが大きい
- 閉鎖的かつ流動性のない環境で派閥や仲良しグループが固定されやすい
- 相談窓口が設置されておらず、悩みが積み重なっていく環境
- 利用者とトラブルになることも
- もしかしたら自分に問題がある可能性も
これらが複雑に絡み合って介護施設の人間関係が悪くなっていってしまうのです。
以下詳細な解説です。
介護業界では人手不足が深刻化しているのはご存じのとおりです。
実際に令和元年の時点では介護施設全体の65.3%の法人が人手不足であると感じている実態があります。
そんな人手不足のせいで一人当たりが担当する仕事量が多くなります。
その結果、心の余裕がなくなり殺伐としてしまうケースがあります。
また、介護業界は慢性的な人手不足のせいで、優秀な職員に負担が掛かりやすい環境になっています。
介護はチームで仕事をするので個人の仕事が終わったら「はい、終了」とはいきません。
スケジュール通りに仕事を進めなくてはいけないので、一部の仕事が早い職員や良く気付く職員がフォローに回ることが多くなり結果仕事が多くなりがちです。
例えば、3人の職員で残り1時間で100の仕事をしなければいけないとします。
Aさんは仕事が遅いので25/100しかできませんでした。
Bさんも仕事が遅いので25/100しかできませんでした。
では残りの50/100は・・。
当然仕事が早いCさんが50/100をやることになってしまいます。
もちろんこのように極端に仕事量が違ってくることは無いと思われますが
そんな環境ではとても人間関係を構築する時間と心の余裕は生まれませんよね。
むしろストレスが増してトラブルの元になってしまいます。
人手不足のせいで教育が満足に行えないことが人間関係を悪化させるケースもあります。
理由は、人手不足で満足のいく教育が行われないと新人職員の不満が溜まりやすいからです。
人手が足りないので先輩職員は新人職員に対して早く一人立ちするように急かします。
しかし、新人職員はゆっくり仕事を覚えたい人だっています。
その結果、「なんで前に教えたのにできないの?」「やる気あるの?」といった形で先輩職員らの不満が噴出するだけでなく、新人職員が馴染めなかったり不信感を抱くことになってしまいます。
実際に令和元年度の公益財団法人介護労働安定センターが発表した報告書を見てみると、介護職員は以下の事で悩んでいることが分かります。
- 人手が足りない【71.5%】
- 仕事内容のわりに賃金が低い【50.4%】
- 身体的負担が大きい(腰や体力)【43.5%】
※出典:公益財団法人介護労働安定センター
このように71,5%の人が人手不足で悩んでいて、しかも身体的な負荷が大きい現状を見ると新人職員に丁寧に指導する余裕はないですよね。
よしあき
いじめやパワハラが横行しているにも関わらず、それを見逃しているケースもあります。
これは『いじめが表面化すると困る人が多い』事が理由として挙げられます。
いじめが表面化すると、いじめている本人や上層部の人間や本部の人間まで困ってしまいます。
なぜかというといじめが表面化することによって・・。
- 介護施設の評判が悪くなる。
- 家族からクレームがくる。
- 新しい職員が入職しなくなる。
- 国からの補助金が減るorなくなるかもしれない
などの不利益を被るからですね。
この状況を冷静に分析すると・・。
『いじめられている介護士×1人』vs『いじめが表面化すると困る人×多数』
という構図になります。
この構図のせいで『暗黙の多数決』が行われ、いじめが無い事にされたり隠蔽されたりしてしまい、介護施設内でのいじめが長期化してしまいます。
よしあき
令和元年度の介護労働実態調査を見ると介護業界の女性職員の比率は78.1%ということが分かります。
ということは約8割が女性ですので女性社会ならではの人間関係の悩みが起こりやすいと言えます。
- 根も葉もない噂話をされる
- 陰口を言われる
実際に私が勤めている介護施設でも
- 「A君とBちゃんが付き合っている」
- 「Cちゃんは男の前だと良い顔する」
などを話している女性職員を見かけます。
施設のような小さく閉鎖的な空間では噂の広まり方がかなり速いです。
このような噂話をきっかけに人間関係に亀裂が入るパターンもあります。
図表の色分けの通り、世代や人生経験や価値観の違う人たちが多く働いていることも人間関係悪化の原因として挙げられます。
正直なところ介護施設は内定の倍率がかなり低いので、業種に限らず仕事を辞めて再就職をしたいけどできなかった人の受け皿的なポジションである感があります。
結果的に、年下なのに先輩だったり年上なのに後輩になる人もいます。
また、年齢も違えば価値観が違う人もいるので衝突が発生したりします。
このように様々な人間が集まることから人間関係が悪くなったりするパターンも存在します。
介護施設は介護職以外にも看護師やケアマネや理学療法士や事務など様々な職種の人たちが働いています。
職種が違えば当然立場も違うためそこで衝突が起こることもあります。
よく見るのは「介護士とケアマネの衝突」「介護士と看護師の衝突」です。
様々な職種が密に連携しないと成り立たない介護施設ならではの人間関係の悩みです。
また介護観の違いも時々見受けられます。
- 歩けるのだから機能維持のために歩かせるべきだ
- 歩けるけどリスクがあるから歩かさないべきだ
という例から分かるように正解が複数あるがゆえに意見がぶつかることがあります。
さらには、生まれた環境や育った環境や今までの経験値は人によって様々なため色んな価値観を持っている人が一緒の職場で働くことになります。
- 休みの連絡は電話ですべきだ。
- 休みの連絡は別にLINEでも十分だ。
などのちょっとの価値観の違いが人間関係に影響を及ぼしたりします。
介護施設に限った話ではないですが職場にはいろいろな性格の持ち主がいます。
その中には明らかに難があると言わざるを得ない職員もいることも事実です。
上記でも挙げましたが、介護職は仕事を辞めた人の再就職の受け皿的ポジションという現実があります。
ですので性格に難があり前職をはじき出された人も一定数混じっている可能性があります。
また、在籍年数の長い物申す系おばさん(いわゆるおつぼねさま)も一定数存在します。
このような嫌な職員と狭いコミュニティ内で一緒に仕事をしなくてはならないためストレスが溜まりやすく人間関係が悪化しやすいです。
介護士は利用者の命を預かる仕事です。
時には生命の危機に立ち会うこともあるくらい重要で責任のある仕事です。
ですので時には教育や指導が厳しくなる場面があるのも事実。
結果的に責任によるプレッシャーや厳しい指導によってストレスが溜まり人間関係に悪影響が出るパターンもあります。
介護施設特有の事例として閉鎖的な空間であるといった特徴も挙げられます。
介護施設は一部面会などを除き、普通のお店のようにお客様を多く招き入れる場所ではありません。
そのため閉鎖的な空間になりやすく、いじめやパワハラが起こりやすい環境とも言えます。
僕が実際に見たり経験した例をあげると・・。
- 申し送り中で多人数が集まっているときに上司が一人の職員を集中攻撃する
- 事務所の奥の部屋で1時間以上説教をされる。
- 空室の居室に呼び出されて説教される。
- 職員全員が聞いているインカムで罵られる。
みたいな事がありました。
また、狭いコミュニティ内で仕事をしなければいけないので嫌な人がいても毎日顔を合わせることになります。
そんな狭い環境なのでストレスが溜まり人間関係も悪化してしまうケースもあります。
もうひとつ狭く閉鎖的なコミュニティの問題として仲良しグループ(派閥)が出来やすく、無口で自分から話しかけられないタイプの人からすると疎外感を抱くことも。
結果的に村八分のようになり普段のストレスの捌け口にされてしまうこともあります。
下記の表を見ても分かるように、すべての項目において相談窓口が設置されていない介護施設の場合は悩みが多くなることが分かっています。
悩みが解決されずに積もっていくと当然人間関係トラブルにも発展します。
こういった相談窓口が整っていないことも原因の一つです。
介護の仕事は高齢者と密接にかかわる仕事ですのでここでも人間関係のトラブルが起こりえます。
暴力やセクハラをする利用者もいればクレーマーのような利用者まで様々います。
しかし、そんな高齢者でも介護士にとってはお客様ですので文句は言えません。
そんな利用者との関わりの中でストレスが溜まり人間関係の悩みを抱えることになります。
よしあき
そして忘れがちなのが“自分に問題がある可能性”です。
もしかしたら自分自身が知らず知らずのうちに他の職員を不快にさせるような行動や発言をしているかもしれません。
「自分は何も問題ないはず!自分の施設の人間関係が悪いのは周りの職員のせいだ!」
と思っている人でも“他人の振り見て我が振り直せ”の精神で一旦自分の言動を振り返ってみる機会が必要です。
- 人間関係が悪くなる原因を大きく分けると2種類ある。
- 一つは個別の職員の問題
- もう一つは介護施設自体の問題
- この両者を改善していくことが人間関係改善のカギになる
悩める介護士
具体的な働きやすい職場環境を整える方法としては以下の7つの方法が考えられます
- 目の前の人間関係を良くしていく努力をする
- 新たな介護リーダーを選出する
- 色々な価値観があって当たり前と考える
- 定期的に部署移動をして職員の流動性を作る
- 仕事量を減らすために業務の棚卸をする
- いじめやパワハラがあれば第三者に相談をする
- 新人の指導やメンタルケアを徹底する
以下で具体的な職場環境を良くして人間関係まで改善していく方法をご紹介します。
介護職員間の人間関係を改善していくには色々なアプローチが考えられます。
- 相手から嫌がられたり嫌われる行動をしないようにする
- 職員や利用者に好かれる人になって信頼関係を築いていく
- 価値観や多職種との違いを受け入れて理解し協力できるようにする
- コミュ力を高めておく
など様々な方法が考えられます。
詳しくは下記の記事で解説しています。
よしあき
人間関係が悪い部署は新たな介護リーダーを立てる事で改善していく可能性があります。
雰囲気の悪いチームは介護リーダーに問題があるパターンが多くあります。
その悪い雰囲気を変えるために新しいリーダーを立てて新しい風を送り込むのです。
頭から水をかぶれば全身が寒くなりますが
暖かいお湯をかぶれば全身が温まります。
それと同じく
組織もTOPがダメなら全体がダメになり
良いリーダーがいれば全体も良くなっていくのです。
それほど介護リーダーの役割は重要です。
介護リーダーを選出するポイントはメンバーの事を第一に考えられる人を選ぶようにすることです。
いくら介護技術があり知識があってもチームメンバーの気持ちを考えられない人はリーダーにするべきではありません。
野球の世界には『一流の選手が一流の監督になれるとは限らない』という言葉があります。
まさに介護もこれと一緒なのです。
もう一つ重要なのは『気が合わない人がいるのは当たり前』と思うことです。
人間には一人ひとり違う考え方や価値観があります。
誰一人として自分と全く同じ人というのはいないのです。
そしてこの考えが絶対に正解
この価値観が正しいというものもありません。
ですのでもし意見がぶつかったり文句を言われたとしても
悩める介護士
と受け入れる柔軟さも必要です。
具体的には・・。
- 自分と違う職種や意見の持ち主でも否定しない
- 相手の考え方を矯正しようとしない
- 共感できる部分は共感してあげる
この様な態度を示すようにしましょう。
みんな違って、みんな良い。
価値観や考え方が違うという事を大前提に仕事をすることで無駄に衝突して人間関係が悪くなるという事態はなくなります。
また、定期的に部署移動をして職員の流動性を作ることも職場環境を整えていく上で重要です。
介護施設ではチームメンバーが固定化しやすいので自然と派閥も生まれてしまいます。
しかし、定期的に部署の異動をすればこんなメリットが得られるようになります。
- 派閥が自然と解体されていく。
- 新しい介護職員同士の交流ができるようになるので派閥から漏れた介護職員も人間関係を再構築できる。
この様な理由があるので職場環境を改善して人間関係も良くするために部署移動というのは必要なのです。
仕事量が減れば余裕が生まれますから職場環境の改善に繋がります。
ですので仕事量を減らすため業務の棚卸をすることも重要になってきます。
業務の棚卸とは『本当にこの仕事はやらなければいけない事なのか』という事を精査していらないならスパッと辞めてしまう事です。
僕が実際にリーダー時代にやった業務の棚卸の例を挙げると・・。
- 1日3回のごみ捨てを2回に変更
- 利用者の排せつパターンを再調査し、リズムや時間別の尿量を把握することでオムツ交換の回数を減らす
- 会議を1か月に1回から2か月に1回へ変更
- 施設全体の申し送りを廃止し、部署ごとに実施する
など無駄な仕事を削ってきました。
仕事を削った後も要注意です。
なぜかというと油断している隙に新たに仕事が増えてしまう可能性もあるからです。
こんな時はミニマリストの思考法が役に立ちます。
1個モノを買ったら1個捨てる。
これをそのまま介護の仕事に当てはめてみると・・。
1個仕事を増やしたら1個無くす。
これを忠実に守っているだけで仕事量は絶対に増えていきません。
ですので業務の棚卸をしつつミニマリストの思考も取り入れてストレスを抱えにくい職場環境を実現し人間関係を改善していってください。
もしあなたの介護施設でいじめやパワハラがあれば絶対に許してはいけません。
当事者はもちろん、それを目撃した人も見て見ぬふりをしてはいけません。
何かしらいじめやパワハラに対して行動をしないと閉鎖的な介護施設の特性上、長引く可能性が高くその雰囲気が施設全体に波及してしまうからです。
具体的な対処法としてはボイスレコーダーや詳細なメモなど証拠を集めて第三者に相談するのが一番です。
第三者とは・・。
この様な公的な機関へ相談しましょう。
そこまでしなくても・・。
という人は以下の記事を参考にいじめやパワハラに対処していきましょう。
\看護師からのパワハラ/
\上司や主任からのパワハラ/
よしあき
新人の指導やメンタルケアも重要です。
新人が育ってくれる環境であれば将来的に介護士不足で悩む可能性は低くなりますから安定しやすくなりますよね。
さらに、新人を大事にするという風潮が介護施設全体に伝わり介護職員の安心感も得られるようになります。
介護職員が安定して働けて安心感もある介護施設は確実に良い労働環境と言えます。
その結果、重労働によるストレスも感じにくくなり職員同士の衝突も自然と無くなっていきます。
この記事で一番お伝えしたかったことは『どんなに雰囲気の悪い介護施設でも人間関係は改善できる』という事です。
人間関係が悪いという事は伸びしろはかなり多くあるという事です。
その伸びしろを生かさない手はありませんよね。
- 目の前の人間関係を良くしていく努力をする
- 新たな介護リーダーを選出する
- 色々な価値観があって当たり前と考える
- 定期的に部署移動をして職員の流動性を作る
- 仕事量を減らすために業務の棚卸をする
- いじめやパワハラがあれば第三者に相談をする
- 新人の指導やメンタルケアを徹底する
ぜひこれらを意識して働きやすい雰囲気の良い施設を目指してください。
よしあき